2008年05月23日

いまここ

ヘルガさんが浜松医大に入院してからのこと。


彼女は毎朝早く起きて、病院の庭を散歩し、そこに咲いた小さな花を摘んでは、小児病棟の子供達にプレゼントしていました。



話は少し変わりますが、小児病棟には、生まれつきの病で満足に生きることさえ叶わない子供がいます。



僕の知り合いが、そんな子供をお見舞いに行ったときのことを話してくれました。

その子はしゃべることも身体を満足に動かすこともできない子だったそうです。


それがお見舞いに来てくれた彼を見ながら、必死に身体を動かして、寝返りを打とうとしたそうです。



あとで母親に聞いたところ、その子は見舞客のためにベッドのスペースをあけて、坐る場所を作ろうとしたのだそうです。


そのような状態に置かれても人への気遣いを忘れない、というよりも本能的にそのような優しさが発揮されるのも、人間の真の姿なのかと思いました。





さてヘルガさんの話に戻りますが、病床での彼女は見る影もなく痩せこけて、誰ん目にも死期が迫っているのが見て取れたそうです。


見舞いに行った向和尚は、どのような言葉で励ましたらいいのか迷ってしまったほどでした。




そんな向さんの様子を見て、ヘルガさんが言いました。


まさに、その言葉こそ、彼女が命がけの修行で得た境地だったのではないかと思います。




「向さん、いまここよ」

「私はいまここで生きているわよ」





長年の修行を積んできた向和尚は、その言葉を聞いて恥ずかしく思ったそうです。






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